2014年07月11日(金)

サンアゼリアフィルハーモニカ メンバー紹介
第3回 塚越 慎子 さん(マリンバ)

マリンバ奏者・塚越慎子さん。昨年10月のサンフィル創立コンサートの際に、ロビー・コンサートでの演奏をお聴きになった方も多いのではないでしょうか。サンフィル公演では重鎮揃いの打楽器ファミリーの紅一点として職人に徹していますが、実は、第一線で活躍する才気溢れるソロ・マリンバ奏者でもあります。コロコロと真珠が転がるような快活な高音から、身体にじんわりとあたたかく響いてくる豊かな低音まで、マリンバの音色は変幻自在。マリンビストとしての活動についてお聞きしました。

 ― マリンバは打楽器の中では珍しく、ソロで演奏される楽器なのですよね。

 「そうですね、もともと母や姉の影響で物心ついた頃からピアノをやっていたのですが、12歳の時にたまたまマリンバの演奏を聴く機会があったんです。その大きさ、存在感、音色、超絶技巧の速いパッセージを演奏する技術…。一瞬で魅了され、『私はあの楽器がやりたい!』と隣に座っていた親に言っていました。そしてそこから迷うことなくマリンバのスパルタ教育が始まりました。」

 ― マリンバを始めると言っても、まずお家にマリンバが置けるのか心配になってしまいますが(笑)

 「実はですね・・・ちょうどマリンバをやりたいと言っていた頃に、家を建て替え中でマンション暮らしをしていたのですが、グランドピアノもあったので、普通の部屋とは別に1階に倉庫を借りていたのです。そこに荷物はもちろんグランドピアノも置いていたので、よし!そこにマリンバを置こう!となりました。そこでポコポコポコポコ弾いていましたね。高校から音楽学校に進むと決心したので、もう迷っている時間がなかったという事情もありました。肝心の新居でのマリンバの居場所は、家族で設計図を広げて『はて、どこの部屋をマリンバの部屋にしよう?』と会議をした結果、ガーデンルームをやめてマリンバ部屋にすることになりました。無事マリンバの場所も確保でき、そのような中でずっとマリンバを練習していました。」

 

 

― そうして晴れて音楽学校(国立音楽大学附属高校)に入学されたわけですが、マリンバを極める仲間というのは大勢はいなかったでしょうね。

 「マリンバはいなかったですね。確かに、他の誰かと一緒に切磋琢磨する、ということはできない環境ではありました。打楽器の先輩はいらしたんですが、太鼓専攻などで、マリンバ専攻ではなかったです。そういう意味では一人だったんですが、ただ、私にはそれが合ってたのかなと思いますね。12歳でマリンバを始めてから高校に入るまでも周りにマリンバの子は一人もいなかったですし、もともとマリンバという楽器自体そんなに情報が多くあるわけではないので、『自分で調べてこうやって行こう』という意志が必要不可欠だったんです。先生のレッスンに行っても、次の曲を自分で探して『これを勉強してみたいんですが大丈夫でしょうか』というかたちでした。先生から与えていただくっていうレッスンは受けていなかったんですね。そういう意味では周りに人がいない分、ああもっと頑張らなきゃ、という気持ちにさせられたのかもしれないですね。」

 ― 与えてもらうのではなく、自分から情報を手に入れていくという姿勢は、学ぶべきものがありますね。演奏される曲も耳馴染みのある曲から現代作曲家の曲までとバラエティに富んでいますが、レパートリーを拡げるということも意識されていますか?

 「そうですね、マリンバはもともとアフリカで生まれて、アメリカで今の形に完成されたのが50年ほど前なんです。モーツァルトやベートーヴェンの時代にはマリンバはありませんでしたので、もちろんそういう作曲家の書いたマリンバの曲はありません。だからといって、現代音楽ばかりになってしまうとどうしてもお客様の層が限られてしまうので、自分で編曲したり、この曲を弾きたいからと言ってピアニストに伴奏をつけてもらったり…色々ですね。なにより、曲を委嘱することも多いです。」

 



 2月に東京の紀尾井ホールで行われたソロ・リサイタルでは狭間美帆の委嘱作品をメインプログラムとして据えていましたね(狭間美帆作曲「アメリカ組曲 ヘ短調」マリンバ/ソプラノ・サクソフォン/コントラバス)。

「やはりマリンバを知っていただきたい、というのと同時にもっとマリンバの曲を増やしていきたいという思いがあります。今生きている作曲家が作った曲を、今生きている私が演奏する。それが面白いかなと思うんです。アレンジを除いて、私のために作曲家の方が書き下ろした作品というのはもう10曲以上あります。ものすごく難しい曲が出来上がってくるんですけどね。人間じゃ演奏不可能、というところもあったりするんですよ(笑)。」

― 狭間作品もマレットの色々な所で叩いてましたね。

「あれは本当に難しいんですよ!マレットの先端でたたいたりするんですが、最初に楽譜をもらった時に、これは不可能だと思ったんです。でも、やってみようじゃないか、と。練習して練習して・・・どうしても本当に人間じゃ不可能、両手を伸ばしても届かない、というようなところだけは直しをお願いしました。」

― それは新しい奏法が生まれるということにもつながりますか

「私は特に実験的な奏法といったものは求めていないので、わりとノーマルに弾く曲が出来上がってくることが多いです。作曲家さんによっては『こうしてみたらどういう音が鳴るの』という話から、敢えてすごく柔らかい毛糸玉のようなマレットを使ってモフモフしたはっきり聞こえない面白い音色を出したりすることもあります。」

― マレットというのは自分で作るのですか?

「私の場合は全部売っているものを買っています。すごくシンプルな構造で、棒があってその先端に小さい玉をつけて、毛糸を巻いていくだけで・・・材料さえそろえばできるのですが、巻くのも少しでも引っ張り具合やずれなど、途中で変化してしまうと音色が変わってしまうんです。巻く方もいらっしゃいますが、私の場合は買ったもので演奏することが多いです。実はかなりの数を所有しているんですよ。約1000本ほどを持っています!ちょっとしたマレット畑ですよ(笑)。」


 

ステージでの引き締まった表情とは少し違い、終始朗らかで笑顔の絶えない彼女。演奏活動の息抜きにはお料理やお菓子作りに没頭することもあるそうです。9月のサンフィル公演でも、ご注目ください!



塚越 慎子(つかごし のりこ)プロフィール
国立音楽大学附属音楽高等学校を経て、国立音楽大学を首席で卒業。同時に「武岡賞」受賞。最優秀生として皇居内桃華楽堂にて御前演奏を行う。パリ国際マリンバコンクール第1位をはじめ、ベルギー国際マリンバコンクール、世界マリンバコンクールなど国内外のコンクールにて数々の賞を受賞して、現在最も注目を集めるマリンバ奏者の一人。
2008
年より2010年までアメリカ、ノーステキサス州立大学にて研鑽を積む。2012年第22回出光音楽賞受賞。現在、国立音楽大学、洗足学園音楽大学非常勤講師。
Innovative Percussion契約アーティスト。

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