2014年09月10日(水)

 サンアゼリア フィルハーモニカ メンバー紹介 第4回
丸山 泰雄さん(チェロ)

 ―9月6日に創立1周年記念演奏会を終えたサンアゼリア・フィルハーモニカ。今回も、オーケストラの演奏水準の高さ、ホールの響きの良さに驚いたという感想をお客様から頂いています。また、「聴いたことのない日本人作曲家の曲もあったが、楽しめた」という感想も多く頂いたように、サンフィルの一つの特色である「邦人作曲家の作品を紹介し、普及・育成する」という理念が強く打ち出されたプログラムでもありました。

「僕は紀尾井シンフォニエッタ東京(東京・紀尾井ホール)とトウキョウモーツァルトプレーヤーズ(東京・三鷹市芸術文化センター)にも参加していますが、どちらも今年で19年になります。10年続けるとお客様に認知されて、特に三鷹はほんとうに『おらが町のオーケストラ』になっています。どんなプログラムをやってもお客様は聴きに来てくれます。確かに、特に人気がある曲をやるときに一番多くお客様が入りますが、色々なプログラムに挑戦できます。紀尾井シンフォニエッタの方はメンバー自身が指揮者とソリストを選んでいますが、年々友の会会員が増えて、今は定期演奏会を800席のホールで2回やるので、1600人の集客がありますね。
どちらもそれぞれにプログラミングに個性がありますが、そういう意味ではサンフィルも立ち上げてまだ1年ですから、10年この路線でやるといいと思っています。すごくいい武器として、素晴らしいホールを持っている。これは絶対に強みになります。しかもこれが東京だったら珍しくないかもしれないけれど、東京ではないところ、ベッドタウンである和光市でそういうことをして、情報を発信するというのは意味のあることだと思います。メンバーも優秀でいろんな世代のプレイヤーが藤田館長の呼びかけで集まっているから、変なしがらみがなくて雰囲気がすごくいいんです。よく覚えているのが、昨年10月の創立記念コンサートのリハーサル。最初にモーツァルトのシンフォニーを演奏したとき、すごくいい音がしたんです。メンバーと、サンアゼリアの音響の良さという条件が揃った結果でしょう。」


―地域のオーケストラとなっていくためには、どのようなことが必要でしょうか。
「とにかく、まず最初は3年。次は5年、その次は10年。続けることはやっぱり力になる。全国あちこちでホールのレジデンスってあるけれど、5年くらいで諦めちゃうところが多いですよね。予算がカットされてストップしてしまう場合が多いですが、そこから先、続けた人たちこそが、地域に文化を根づかせられるのだと思います。
他のオーケストラとの差別化を図るために邦人作曲家に焦点をあてているのもすごく良いと思います。以前はしらかわホール(名古屋市)だとか、今も続けているのは、いずみシンフォニエッタ(大阪市)が現代作曲家に焦点を当てています。ですが邦人作曲家オンリーではない。バブルの頃はそういうプロジェクトがいっぱいあったけれど、少なくなってしまった。でも優秀な商業作曲家で活躍している方もおられるので、邦人作曲家に焦点をあてるのはすごく意味のある試みだと思います。難解な作品は技術的にも難しいけれど、確かなレヴェルで演奏できる優秀なメンバーが集まっていますから。オーケストラの性能をお客さんに知ってもらうのにもいいんじゃないかな。」

―サンフィルのお客様のなかには、普段はクラシックコンサートに足を運ぶ機会が少ない近隣の方も多いようですが、「初めて聴く知らない作曲家の曲もすごくよかった」というお声を多くいただきます。有名な曲だからお客様が喜ぶというわけではないんでしょうか。
「名曲はどこでも聞けるわけですから。普段クラシックを聴かない方たちをキャッチするためには、最初に聴いた時からわかりやすい、というのは重要ですね。クラシックに馴染むには、ベートーヴェンなどの大家の名曲から入るよりも、わかりやすい邦人作品から入る方が切り口としてはいいかもしれないですね。
まずは、そのためにアウトリーチをいっぱいやる。周りにある団地の方たちが足を運んでくれる、気軽に入れる地域のコミュニティセンターとして活動を続けるということが大事です。
僕らがやっている弦楽四重奏(ヴィルトゥス・カルテット)は、いわきアリオスというホール(福島県いわき市)でレジデント・アーティストをやっていましたが、アリオスは完全に市民のコミュニティセンターとして定着しています。みんながホールの中の広場やスペースで休憩したり勉強したりと、普段から使われているんです。芝居、市民合唱の練習の場など、有料・無料関係なく使われている。市民の方が気軽にホールに足を運ぶことができる環境なんです。そうです。そういう集まりやすい何かをレジデント・オーケストラがいることで創り出せたらと思います。」

―レジデント・オーケストラのあり方、ホールのあり方についてたいへん示唆に富んだお話をありがとうございます。
ところで、和光市では小中学校でのアウトリーチも行っていますが、子どもたちにも聴いてほしい!ということ今回の公演ではアウトリーチの延長としてワンコインシートを設けました。
「三鷹で、10年くらいになるかな?僕が言い出して市内すべての学校に行っているんです、市内全ての学校です。もちろん僕のグループだけじゃなく、木管五重奏なども行ってもらっています。その心は、始めた当時の10年前に聞いたんだけど、東京では唯一三鷹市でだけ芸術鑑賞会をやっていなかったそうです。僕はそれはちょっと可哀想だと思って、僕らが行くよ、と名乗りをあげたのがきっかけです。最初は教育委員会も及び腰だったんですが、一回聴いたら『すごくいい』と。アウトリーチをやっていれば3年、5年たったときに、そこで聴いた子が大きくなってホールに来る。だからボディブローの様に、即効性はないけれど確実に、アウトリーチは効いてきます。もちろん子供たちのために僕らは一生懸命弾きます。子どもたちに音楽を好きにさせなきゃいけないから。100人に1人でもね、好きな子ができればいいですよね。
三鷹のオーケストラは、全国ツアーや帝国劇場、みなとみらい、地方での演奏依頼なども増えてきています。そこまでいくのに20年。サンフィルも近い将来、そうなれる、そうなるはずのオーケストラだと信じています。」

丸山 泰雄(まるやま やすお)プロフィール
1987年東京芸術大学音楽学部卒業。1989年第58回日本音楽コンクール第1位、増沢賞・特別賞を受賞。イタリア パオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクール第3位、特別賞受賞。ドイツ マルクノイキルヒェン国際チェロコンクール特別賞。1992年「東京国際音楽コンクール」第2位及びアサヒ・ビール賞を受賞。第2回日本室内楽コンクール第1位及び特別賞受賞。1992年9月より文化庁海外研修員としてベルリン芸術大学に留学、ディプロマを最高位で取得。現在、ソロを中心に室内楽、主要オーケストラの客演首席で活躍中。紀尾井シンフォニエッタ東京、トウキョウモーツァルトプレーヤーズ(首席)のメンバー。2007年にRMMシリーズ5作品目となるソロCD「ラメンタツィオ チェロ・ヴィルトゥオーゾⅢ(RMM-105)」、2008年にはRMM-103以来となるチェリスト12名による演奏「スーパー・チェロアンサンブル・トウキョウⅡ トゥナイト~アディオス・ノニーノ(RMM-106)」を発表、絶賛販売中。

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